2021/12/20 Spotify Premiumを解約してみた話

Spotify Premiumを解約してみて2ヶ月と少しばかり経った。

 

予め書いておくと、これはApple music等の他の音楽サブスクリプションをおすすめする記事ではないし、それらのサブスクリプションを否定する記事でもない。それに今使っていないだけで、今後契約しないかと言われるとそれも断定できない。ただ、「Spotify Premiumを辞めてみた」だけだ。

しかし、曲がりなりにも音楽に携わっていて有料の音楽系サブスクリプションを契約していないのは結構不思議に思われるので最近考えていたことを整理する。

 

まず大前提として俺はSpotifyの無料会員ではある。Spotifyの無料会員ができることは2021年12月20日現在では「スマホではシャッフル再生しかできない(曲を選んで再生できない)」「PCでは曲を選択できるが、何曲かの再生の後に短い広告が入る」「最高音質は使えない(高音質まで)」「ストリーミングのみ」だ。

上に挙げた通り、PCで音楽を聴いたり探したりする分には時々CMが入ることに我慢さえすれば無料会員でもサブスクの機能は使うことができる。外では音楽を選択して聴けないが、俺の出勤時間の大半がバス移動(コロナ対策で窓を開けているので外の音がうるさい)であり、イヤホンがあまり得意ではないことから、そもそも社会人になってからは出退勤で音楽を聴かなくなっていた。だから今の移動時間は携帯を見ているか、本を読んでるか、外の景色をぼんやり見ているか、白目を剥いて寝ているかのどれかになった。しかし、これが自分の車を運転して移動するのだったら話は変わるかもしれないし、現に遠出する時には聴きたくなる時もある。

 

現状、サブスクを辞めてみて生活は大きくは変わらないという印象。音楽を探すのにも困っていない。

 

しかし、大きく変わったことが一つある。

 

それは作品やアーティストに対して愛着が湧くようになったことだ。

 

今までサブスクを使っていた頃は月額1000円足らず、年間だと9000円弱の料金を支払うだけで数万曲のライブラリにアクセスできて、最新の曲にも触れられ、シャッフルや関連

アーティストで自分の好みにあったアーティストに触れられることができた。CD代金も浮くし、廃盤になっていたCDも聴くことができた。

 

しかし、それと同時に「全て」手に入ってしまったことで満足してしまっていた。良いアーティストを見つけた時にそのヒットチャートに入っている曲を何曲か聴いて満足してしまい「フォローする」ボタンを押して満足してしまっていた。それだけでそのアーティストを知った気にもなっていた。別にそれが悪いことだと言う訳ではなく、作曲をしている俺にとっては広く浅く音楽を知ることは重要で、そしてそれを格安で出来るというのは大きなアドバンテージだった。

 

ある日奈良のLOSTAGEのCDを買った。彼らの最近の新譜は広告はどこにも打ち出さず、音源の配信は無し、プロモーションも無しでCDを買えるのはライブ会場とLOSTAGEの五味岳久氏が経営しているTHROAT RECORDSの実店舗とオンラインストアのみだった。そのようなリリース方法・活動に至るまでの経緯や考えはこの本に書いてあるので割愛する(本人たちの意思が俺のせいで誤解を含んで伝わってしまったら嫌なので、興味を持った方は是非調べてみるかこの本を読んでみてください)。

www.amazon.co.jp

 

久々にCDを買った。THROAT RECORDSのオンラインストアからずっと欲しかった「In Dreams」「Guitars」とbachoとのスプリットCD「HOMETOWN e.p.」とLOSTAGEの旧譜を買った。届いたCDの中にはCDだけではなく、LOSTAGE Ba/Vo五味氏直筆の手紙が。「この度はTHROAT RECORDS ONLINE SHOPのご利用ありがとうございました!」の文字が飛び込む。

 

思い出した。音楽は人から人の手に渡るものだった。

未だに奈良の象徴である鹿のイラストとTHROAT RECORDSの住所が共に書かれた手紙は大切に持っている。

 

そういえば、サブスクを使い始めてから、アルバム全てを聴くことは無くなっていた。アルバム単位ではなくシャッフルや曲単体で聴くことが増えていた。そして自分が一度に享受できるものは意外と少ないことにも気がついた。「沢山聴くことができる環境」があっても「沢山聴くことが出来る自分」、または「沢山を聴きたい自分」ではなかった。自分は一つ一つのCDを、一つ一つの音楽を、一つ一つの意志を読み取って感じていくのが好きだった。その丁寧で面倒で遠回りで現代的ではない作業が好きだった。

 

同じ理由で6月頃にAmazon Primeを解約した。映画一つ見てもその余韻やシーンに浸っていたりするのが長くて、会費が無駄だったから。俺は9月ごろに見た「LEON」のラストシーンが胸に残っていて、レオンの大切にしていた観葉植物を植えているマチルダの表情を今でも思い出す。

 

久々にタワーレコードディスクユニオンブックオフのCDコーナーを周り始めた。今までまともに聞いてなかったアーティストのCDからジャケットで好きなものを選んだ。買える数にも限界があるから数あるCDの中からどれかを選んで、同じようにどれかを捨てた。そのCDがそのアーティストの代表作であるかは知らなかった。Amazonでの評価が良いかはわからなかった。でもそれでも自分のアンテナの向いたものに金を落とした。家にあったCDプレイヤーの電源を入れてCDを再生した。その瞬間、Sunny Day Real Estateの「diary」は俺の大切なCDになった。

 

Spotify Premiumを解約してみて2ヶ月と少しばかり経った。

2ヶ月前に聴けた音楽の1%にも満たない量の音楽が、今の俺の人生を間違いなく照らしてくれている。

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