「真っ直ぐだね」とよく言われる。
昨日の撮影で「ミツハシくんは真っ直ぐが似合っているね」と言われた。昨日はわからないなりにもポーズを取ったり取らなかったり、表情を変えてみたり変えなかったりしたが、結局カメラに対して真っ直ぐ向いているのが俺らしい、とのこと。
そういえば「真っ直ぐな人」であると言われることが多い。真っ直ぐな目をしている、ともよく言われる。かつてすごく好きだった女性からも「真っ直ぐだね」と言われた。俺は俺自身を捻くれていて面倒な奴だと思っているから、「真っ直ぐだね」と言われる度にきっと鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
母親は俺のことを「素直な子に育つように」と頭を撫でながら育てたらしい。だからか「あんたは私の思い通りに素直に育たなかった」と今ではよく毒づかれる。自分が素直だとは思わないし、母親の言う素直は「親や先生の言うことを文句を言わずに受け取って従うこと」なのだろうから、恐らく母親から見た俺は素直ではないのだと思う。事実、親の言うことは一つも聞いてこなかったし、嫌いな先生の前では表情筋を使って繕い、心の底では「どうやったらコイツの給食に雑巾の搾りカスを混入させられるか」を真剣に考えていた。今も昔もとても素直と呼べる様な人柄をしていなかったと思う。書いていて思ったがそもそも人間性に問題がある。
俺は「真っ直ぐ」なのか?
そもそも「素直」と「真っ直ぐ」は違う?
スタジオに行く道すがら「素直」で検索する。
以下、goo国語辞書より
す‐なお〔‐なほ〕【素直】 の解説
[形動][文][ナリ]
1 ありのままで、飾り気のないさま。素朴。
「―なる山家 (やまが) 育ちのたのもしき所見えて」〈露伴・風流仏〉
2 性質・態度などが、穏やかでひねくれていないさま。従順。「―な性格」「―に答える」
3 物の形などが、まっすぐで、ねじ曲がっていないさま。「―な髪の毛」
4 技芸などにくせのないさま。「―な字を書く」
ありのまま。確かにありのままでは親や先生の教えを受け取れなかった。
だから自分を取り繕うか反抗するしかなかった。なるほど、素直か。
「真っ直ぐ」で検索する。
以下、goo国語辞書より
まっ‐すぐ【真っ▽直ぐ】 の解説
[名・形動]
1 少しも曲がることのないこと。また、そのさま。「―な(の)線」「―に歩く」
2 寄り道などしないで、直接に目的に向かうこと。また、そのさま。「家へ―に帰る」
3 かくしだてのないさま。正直。「―な性格」
ものすごく曲がっているし、平気で嘘を吐きますが?
寧ろ「素直」の方が当てはまる気がしている。
ありのまま、だから。
考える。「真っ直ぐ」とは何か。
高校生で初めてバンドでライブをした。初めてSound Stream sakuraに行き、ライブハウスという場所を知った。こういう世界があるのかと思ったし、今まで出会ったことが無い種類の大人がいた。ここでは自分の捻くれた部分を全部そのままで出してもそれが受け入れられる様な気がしていた。何故なのかは未だにわからないが。
そうか。ライブハウスのものさしで測った俺は真っ直ぐだったのかもしれないな。世間一般の固いものさしじゃなくて、ライブハウスの変幻自在に形を変えるものさしで測ると、どんなに曲がっている人でも真っ直ぐとして認識してくれるのかもしれない。
最近読んでいる本に「人は誰でも自分を認めてほしいという欲求がある。人間である以上自分のことを考えずにいられない。」と書いてあった。中学生までの自分は、自分のありのままで受け入れられなくて不貞腐れていたのかもしれない。ライブハウスは少し偏った価値観も認めてくれそうな空気がある。寧ろ世間一般の固い物差しでは測れない人たちがライブハウスを作り上げているのかもしれない。バンドもアーティストもお客さんもスタッフも認められたいのだとしたら。
今日は灯人のスタジオ2回目だった。スタジオ帰りの最寄駅から家までの帰り道。「俺も誰かを認めてあげられたらなあ」とか身の丈に合っていない傲慢を抱えて歩く。少しカーブしている線路沿いの道がいつもよりも真っ直ぐに見えている。