友人と後輩の就職祝いのプレゼントを見に行った。俺でも知っているブランドの店に行く。Tシャツ、帽子、ネックレス、財布、ネクタイ……。短い時間なのに高級品に囲まれて思わず息が詰まりそうになった。キーケースが1万円以上もするなんて信じられなかった。友人曰く「財布を見るだけでそいつが金を持っているかどうかわかる」とのこと。咄嗟にTHRASHERのショルダーバッグの上から「機能性だけを見て通販で買った安い財布」を握りしめた。背筋に冷たいものが走った気もした。
不動産・証券・保険等の堅い企業の場合は財布や名刺入れやキーケースがどれほど高級であるか、でお客さんからの印象が変わる、らしい。「“この社員さんはお金持ちだ!”と思った方がお客さんは契約したがる」そうだ。プレゼントを買った帰りの電車。Amazonで買った自分の財布を見ながら、「遠くから見たら変わらないと思うけどなぁ」と自分の財布に"Paul Smith"と指でなぞった。反対側の車窓に目をやるとファストファッションと古着で全身を固めた俺が一人、間抜けな顔をして座っていた。その車窓の自分がいる部分だけ切り取って下に『無難』と題名をつけて額縁に飾る想像をする。滑稽だ。滑稽か?
「どう在りたいか」ではなく「どう見られたいか」が俺たちには求められている。