2022/3/11

中学一年生だった。元々地盤が弱い場所に建てられた中学校に通っていた。クラスメートの誕生日だった。卒業式が近かった。教室の掃除を終えた頃だった。

 

 

 

元々弱かった地盤はとどめを刺されて中学校は約10cm近く沈んだ。来るときには登って歩くことの出来た石のブロックが、帰るときには俺たちの歩く道と同じ高さになっていた。校舎を出てすぐのアスファルトは大きく地割れした。11年経った今も三角コーンが置かれている。校門の前では液状化が起きていた。茶色い水が地面から噴き出して、まるで吐瀉物が広がるかのように道を茶色く染めた。クラスメートは「今日は俺の誕生日なんだ」と呟いた。

 

 

 

家に帰ると口を大きく開けた冷蔵庫からピーピーと音が鳴っていた。電話は混線して知らない母親と息子の会話が聞こえた。黒い塊が遠い地を飲み込んでいく映像を見た。同じCMが何度も流れた。「不謹慎」の意味を知った。

 

 

 

東北から遠く離れたこの地で起きた真実。はっきり言って悪夢だった。忘れたいけど決して忘れてはいけない悪夢。