2022/8/27 水が無ければ咲かない

花火ウィークに出演。生憎の雨。俺がステージ立つ前は雨も止んでいたのに、俺がセッティング始めた瞬間に大雨が降った。結果、目の前のベンチ席は当然人がゼロ。ソーシャルディスタンスにしてはかなり距離のあるスタート。声が届くならばせめて、その心の距離だけは縮めたかった。30分間きっちりとやった。最後"平行線"をやる前になって雨が止みだしたのはまさにドラマだった。

 

 

イベントのブッキングをしているRUSHの久保田さんは俺がどんな奴なのかも知らないのに誘ってくれた。花火ウィークは今年で10回目。花火大会自体は3年ぶりの開催。そんな記念すべき日によく誘ってくれましたね、と聞いたら「なんとなくやってくれる気がしたんですよね」と笑った。ライブ後の俺に「出てくれてありがとうございました。」と久保田さんは頭を下げた。お礼を言わなくてはいけないのは俺の方だった。俺も出来るだけ「ありがとうございます」を沢山伝えるようにした。

 

 

16:00ごろ羅漢さんのライブを見た。人が沢山入っていた。羅漢、と大きく書かれたタオルを振り回している人も多かった。すごく聞き取りやすかったし言葉選びも面白かった。何より人の良さが曲からとても伝わってくるライブだった。俺と同じようなMCをしていて驚いてしまった。板の上に立つ人たちが今夜考えていることはみんな一緒だった。

 

 

夜は同僚と合流して花火へ。職場が特別席を用意してくださった(本当にありがたい!)。かなりの雨に降られてカッパを着た状態での鑑賞になった。花火が花開かせる度に、光に遅れて音が腹の底から重く鳴った。後で聞いた話によると爆発音が山に反射するのでこの衝撃が生まれている、とのこと。雨の中、夜空をキャンパスに職人が時間をかけて作った「作品」達が現れては消え、また現れては消えた。花火ひとつ作るのにも莫大なお金がかかる。大きな一発を上げる選択もあれば、所狭しと花火をあげて夜空全体を明るく彩る選択もある。どのタイミングで光を消すか、色を変えるか、動きを変えるか。イメージや発想が表現として現れては消えた。止まない雨の中、時間をかけて作った一発が空に消えていくのを職人達がどう思っていたのだろうか?この街の人たちは3年ぶりの一日をどう見ていたのか?2時間のプログラム中ずっと考えた。体はかなり冷えていたが頭だけはずっと回転していた。

 

 

最後の花火が終わった。川の対岸の職人たちは感謝の意を赤い灯で灯していた。それに対してこちら側の9万人の客が各々の色のペンライトで応えた。言葉は要らなかった。目の前に広がる色とりどりの光が大曲の真実だった。灯人なんて大層な名前でバンドをやっているのに一番暖かいものをもらってしまった。帰り道にフジファブリックは要らなかった。