2022/4/14 Sound Stream sakuraにてライブ

晴れた木曜日だった。平日に休みを取ると学校をずる休みしたときのような気持ちを味わえる。今日はライブだった。

 

 

朝にスタジオに入って最終調整をする。2時間でやれるだけのことはやった。今回はバンドサウンドを考えてギターの音を作った。今までの自分では考えてこなかったことをこの数週間で考えた。ライブがどう変わるのか楽しみだった。

 

 

スタジオを終えてドラゴンさんは機材を取りに別の場所へ、俺は着替えを取りに家へ、クロガネさんは直接ライブハウスへと全員が別行動。俺は家に一度戻って着替えだけ取ってすぐに駅へ向かった。滞在時間はわずか10分だった。駅へ着いて入り時間に着くことに安心したのか、電車の中でうとうとしてしまった。見事に寝過ごした。最悪だった。すぐに連絡をして反対方向の電車に乗って志津で降りた。

 

 

リハを終える。相変わらずギターがでかいと指摘された。ボリュームを下げる。楽器を片付けてクロガネさんとやよい軒へ行った。定食は人生を豊かにする。あんなに幸せなものはない。美味しいご飯をたくさん食べるのが人生であり、結局はそれが幸せなのだ。クロガネさんとは大切な話をたくさんした。

 

 

ミーティングを終えてライブが始まる。ヒノきのぼうとおナベのふたの演奏。制服を着た彼らの演奏を見ていると高校生の頃に戻ったかのようだった。俺が高校生の頃には「アフタースクールイベント」があって、学校帰りにライブハウスに集まって制服でライブをしていた。あの頃は次の日の授業は眠かったけどものすごく充実していた。今も仕事の合間を縫ってライブをしていたり、休みの日に楽器を持って集まっているのを考えれば当時と何も変わってないのかもしれない。しかし、高校生の頃には限りなく今が輝いていて、そこには何の諦めも後悔もなかった。どこまでも行ける気がしていた。大人になった、ということなのだろうか。今時の高校生はこのご時世でも逞しくライブ活動を重ねているらしい。

 

 

2番手はヒビキだった。ヒビキが正直な言葉を重ねている様子が印象的だった。自分の道があっているのか間違っているのかわからぬまま歩を進めているように見えた。その真っ直ぐさが羨ましかった。悩みも希望も全て置いていったライブになっていた。嬉しいお知らせもあって、これからがさらに楽しみになった。ハイウェイという曲が良かった。

 

 

3番手は中川共喜くんのバンド。今日からバンド名がついたらしい。一曲しか聞けなかったが相変わらず曲が良かった。一曲だけ聴いて早々に楽屋に入った。楽屋では自分の好きな曲を流して聞いた。音楽をやる前に音楽を聴くのは不思議な感じだが、闘争心とか落ち着きを取り戻す感覚があった。サポートの二人は静かに出番を待っていて頼もしかった。改めてすごい二人にサポートしてもらったなと思えた。

 

 

ステージに立つ。高校生が時間の関係で帰ってしまったのが残念だった。今、目の前にいる人、来れなかった人も全て自分の想像を超えたところまで連れて行きたかった。途中、自分の目の前の視界が広がって、世界が自分のものになるような錯覚に陥った。あの時、紛れもなく俺が世界で、世界が俺だった。以前、星野源さんがそのようなフロー状態に陥った時のことを「アメーバ」と表現していたのを瞬間に思い出す。心臓のど真ん中で大きく鼓動が鳴る。

 

 

良かったよ、と言ってくれる人がいて嬉しかった。サポートの二人には頭が上がらない。QLTONEのケイタさんも見に来てくれていた。率直な言葉に背中を叩かれた。打ち上げらしい打ち上げもなかったが、何となく喫煙所の前で話している時間が心地よくて、結局こういう時間が好きなんだろうな、と再確信。終電にクロガネさんと乗った。ラーメンが食いたかったが、既にどこも閉まっていて、松屋に二人で入った。味噌汁の暖かさが胃の奥まで染み渡るのをゆっくりと噛み締めた。決心する。クロガネさんに誰にも言えていない悩みを話した。笑ってくれても良かったのに、真面目に聞いてくれた。自分がこの数年、一人で背負ってきたやたらと大きい荷物を下ろせた瞬間だった。クロガネさんは「話してくれてありがとう」と言ったけど本当に感謝しなければならないのは俺だった。

 

 

クロガネさんと別れた後、軽くなった心と疲れ切って重い足取りで家まで歩いた。一人で戦っていると思ったけど、そんな訳なかった。俺は人に恵まれている。そう感じた一日。